第8回:ひとりで抱えなくて、いい ─ AIを味方につける 自分らしい働き方

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シリーズ『AIを味方につける 自分らしい働き方』第8回(最終回)

前回は、AIは完璧に使いこなさなくていい、気軽に触ってみるところから始めればいい、という話をしてきました。

このシリーズも、今回で最終回になります。最後は新しい話をするというより、これまで一緒に歩いてきた道を振り返りながら、後半で私自身に起きた、ある変化についてご紹介してみたいと思います。


これまでの旅

この8回は、大きく二つの旅でした。

前半は、自分の内側を掘る旅。いまが棚卸しの時期だと気づき、最初に、なぜ、この業界、この仕事を選んだ理由を思い出し、心が動いた瞬間を拾い、職場の正解に染まる前の自分らしさを取り戻す。自分の足元を、もう一度見つめ直す時間でした。

後半は、AIと一緒に動き出す旅。命令ではなく相談してみて、諦めていたことに気づいて、完璧を求めずに実験してみる。ひとりでは動かなかったことが、少しずつ動き始めました。

そして、その後半を過ごすうちに、私の中で静かに変わったことがあります。


これまで、抱えたまま止まっていたこと

それは、「ひとりで抱えたまま止まっていたこと」が、減ってきたことです。

たとえば、突然の痒みに、病院でもらった塗り薬の種類に迷う。今日は日曜日、この症状にこれを使っていいんだったか。以前なら、我慢して週明けを待っていました。今は、手元の情報を伝えて、まず使えるものがあるか調べてみる。

たとえば、ペットの様子が急におかしくなって、頭が真っ白になる時。複雑な背景から、どう対応すればいいか分からないから、とっさに相談してみる。答えが出るわけではないけれど、いま何を確かめるべきか、どういうときに急ぐべきか優先順位が分かるだけで、少し落ち着ける。

そして、これが一番大きいのですが——専門家に相談する前の、整理です。

相続や、社会保険や、税金のこと。司法書士や税理士に聞けばいいのは分かっています。でも、日常的な付き合いがないと、どこまでプライベートな話をしていいのか分からない。こんな初歩的なことを聞いていいのか。そもそも何を質問すべきなのか。その入口で、なんとなく気後れして、ずっと後回しにしていました。

そういうとき、専門家に会う前に、AIに聞いておけるのです。「こういう事情なんだけど、専門家にはどこまで話していいものか」「まず何を整理して持っていけばいいか」と。すると、身構えていた相談が、急に近くなる。

ひとりで、抱えなくていい


「聞いてはいけない」と思い込んでいた

こうやって振り返り、気づいたことがあります。

思考が止まっていたものの多くは、「難しいから」ではありませんでした。「これは、こういうものだ」と、どこかで決めつけていたのです。

専門家には、ちゃんとまとまった話を持っていかなければ失礼だ。こんな初歩を聞いたら呆れられる。プライベートな事情は、あまり打ち明けるものじゃない。——誰に教わったわけでもないのに、いつのまにか自分で作っていた、たくさんの「そういうもの」。それが、自分の相談する範囲を、ずいぶん狭めていました。

AIに気軽に話しかけていると、その思い込みが、ふっとゆるむ瞬間があります。「あれ、これ、聞いてよかったんだ」「そんなに構えなくてよかったんだ」と。

一つの正解を急いで出そうとしていたとき、あるいは「そういうものだ」と決めつけていたときには、見えていなかったことです。答えが決まるのではなく、考える材料と、動きやすさが増える。だから、急がなくてよくなる。むしろ、じっくり考えられるようになる。


複雑な時代の、生き方のコツ

考えてみると、昔に比べて、いまは一つひとつのことが、ずいぶん複雑に多様化されています。制度も、手続きも、選ぶための情報も。何かを決めようとするたびに、調べることが多すぎて、整理するだけでくたびれてしまう。

だから、多くの人が——正直、私自身も——途中で考えるのをやめて、なんとなく周りに合わせたり、「まあ、いいか」と後回しにしたりしてしまいます。複雑さに、静かに流されてしまうのです。

そんな時代に、自分の頭の隣に、一緒に考えてくれるもう一つの頭がいてくれる。難しく絡まったことを、一度ほどいて、並べ直してくれる相手がいる。それは、この複雑な世界を自分の足で生きていくための、ささやかなコツになるのかもしれません。


材料が増えると、自分の基準が育つ

いろいろなことを相談し、思い込みがほどけていくうちに、育つものがあります。

自分なりの、判断の基準です。

たくさんの見方や選択肢に触れていると、「自分はこう考えたい」「これは、自分には合わない」という感覚が、だんだんはっきりしてくる。最初はどう扱っていいか分からなかったことにも、自分なりの向き合い方が見えてくる。

私たちは洋服を選ぶとき、スペックだけでは選びませんよね。暖かい、丈夫、それも大事だけれど、最後に手が伸びるのは、着たときの気分や、「これだ」というしっくりくる肌触りだったりします。

暮らしの中の判断も、本当は同じなのだと思います。正解だから、みんながそうしているから、ではなく。自分にしっくりくるか。その基準で選んでいい。

AIは、選択肢や整理をくれます。でも、最後に「こうする」と選ぶのは、いつも自分です。塗り薬を使うか病院を待つかも、専門家に何をどう相談するかも、決めるのは自分。AIはその手前を、そっと支えてくれるだけです。そして選ぶための基準は、誰かに教わるものではなく、いろいろ試すうちに、自分の中に育っていきます。


これからの時間は、抱え込まずに進んでいける

第1回で、これからは「あと何年」ではなく「あと何十年」という時間が見えてくる、という話をしました。

その長い時間の中では、これから、分からないことや、迷うことが、まだたくさん出てきます。健康のこと、お金のこと、家族のこと、仕事のこと。年を重ねるほど、ひとりで抱えるには重い問いも増えていく。

かつては、それを少し不安に思っていました。でも、いまは違います。

分からないことにぶつかっても、まず整理を手伝ってくれる相手がいる。「こんなこと聞いていいのかな」と気後れしていたことも、一度ほぐしてから、ちゃんと専門家や周りの人に相談できる。ひとりで抱えて立ち止まる時間が減れば、その分、前に進める。これまで「面倒だから」「もう遅いから」と諦めていたことにも、もう一度手を伸ばせます。

年を重ねることは、選択肢が減っていくことだと思われがちです。でも、抱え込まずに動けるようになるほど、これからの時間は、むしろ自由に、豊かになっていく。それは、不安ではなく、希望と呼んでいいものだと思います。


おわりに

長い旅に、お付き合いいただきありがとうございました。

振り返れば、このシリーズはAIの使い方の話をしているようで、ずっと「自分をどう取り戻し、どう選んで生きていくか」の話でした。棚卸しから始まり、自分の軸を整え、AIを相棒に、ひとりで抱えていたものを少しずつ手放しながら、諦めていたことへ手を伸ばし、そして最後に、自分の基準で選び、進んでいく。技術のテクニックではなく、ずっと「姿勢」の話をしてきたのだと思います。

急がなくても、ひとりで抱え込まなくても、そばに相談できる相手がいてくれるなら、むしろ落ち着いて、より深く考えられる。これからの時間は、私たちが自分で選んで、進んでいける。

これは、私だけでなく、あなたにもあるかもしれないです。「難しそうだから」「こういうものだから」と、ひとりで抱えたまま、止めてしまっていること。いかがでしょうか?

焦らなくて大丈夫。自分のペースで、選んでみてください。

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このシリーズ AIを味方につける 自分らしい働き方 全8回

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