サワモト メソッドの使い方 ── 自分の職場で動かしてみる
例えば、こんな会話ありませんか?
業務の見直しの会議が始まると、「もっと効率化しよう」と言う人がいます。その反面、「もっとコミュニケーションの時間が必要」と言う人もいます。どちらも、自分の職場をよくしたい気持ちは同じ。けれど、議論は噛み合わないのです。
——うちは、どっちへ向かうのか。
「DXを進めよう」という掛け声は揃っているのに、業務の見直しに入った途端、メンバーから真逆の提案が出る。多くの職場で起きているこの現象は、目指す姿と現在地の認識が揃っていないことが原因です。
サワモト メソッドをまだご存じない方は、まずこちらをお読みください。
サワモト メソッド:職場の今を読み解く視点 →
ここでは、サワモト メソッドの視点で、職場の現在地と目指す進路をどう言葉にしていくか、一つの仮定を置いて解説します。ここでは「オレンジのDX1」にいる職場を例にとります。
まず、現在地に名前がつく
オレンジのDX1にいる職場は、こんな空気感を持っています。
数字で評価される職場文化があり、メンバーは自分の成果を出すことに集中しています。ツールはひと通り入っていて、それなりに使えている。会議も多く、報告も活発です。一見、健全に動いている職場に見えます。
けれど、成果主義が加速していくと、危ういポイントが顔を出します。個人の競争が激しくなるほど、情報共有が止まっていくのです。自分の知見を共有すれば、他の人の成果が上がってしまう。だから、暗黙のうちに情報を抱え込む。会議では報告するけれど、本当に大事なノウハウは手の内に残す。新人が来ても、教える時間は自分の数字を削る時間になる。
こうした空気は、はっきりとは言葉になりません。ただ、誰もが少しずつ感じている。「ツールがいまいち」「会議が多すぎる」「若手が育たない」「うちは古い」——人によって違う言葉で語られる違和感の正体は、たいてい、この情報共有が痩せていく構造です。
サワモト メソッドは、この違和感に 共通の名前 を与えます。「うちはオレンジのDX1にいる」と全員が言えるようになると、初めて、同じ場所に立って次の話ができるようになります。
次に、目指せる方向が複数見えてくる
現在地が定まると、そこから進める方向が見えてきます。オレンジのDX1にいる職場が次に向かえるのは、おおむね3つの方向です。
オレンジのDX2へ進む —— 業務をツールに組み込んでいく
成果志向はそのままに、ツールと業務をより深く噛み合わせる方向です。
バラバラに使われていたアプリが、一つのハブに集まっていきます。たとえばTeamsやSlackのようなコラボツールを中心に据えて、案件管理、稟議、勤怠、KPIダッシュボード、顧客情報——これまで別々の画面で切り替えていた業務が、同じ場所で扱えるようになる。メールの往復で進んでいた承認が、ハブ上のワークフローに置き換わる。
ここで起きているのは、業務をツールに組み込んでいく ということです。ツールに仕事のやり方を合わせることで、処理速度と精度が上がり、属人化していた業務が形式知に変わっていく。
オレンジの職場らしさは保たれます。成果は数字で測られ、判断は早い。けれど、その動きを支える土台が、紙やメールや個人の記憶から、仕組みそのもの に移っていく——これがオレンジのDX2の風景です。
グリーンのDX1へ進む —— 強い部活のような職場をつくる
仕事のペースは保ったまま、人と人の繋がり方を育てていく方向です。
このグリーン職場のあり方、イメージには、強い部活のメタファー が分かりやすいです。例えば、甲子園を目指す野球部のような組織です。
1年生は球拾いから始まり、基礎を身に着ける時期があります。2年で試合に出るようになり、3年で主体的にチームを動かすようになる。先輩は後輩に 型を見せ、なぜそうするかを伝える。後輩はまずその型を身に着け、繰り返すうちに、自分の判断で動けるようになっていく。
役割と段階は明確にあって、その階段を上がっていくこと自体が、育つということです。けれど、目指しているゴールは全員同じ ── 甲子園です。だから、先輩と後輩は対等ではないけれど、同じチームとして力を合わせる。
また、顧問の先生にあたるのが、グリーン職場の管理職です。試合中ベンチで叫ぶのではなく、普段の練習の質と、選手同士の関係性を見ている。「最近どう?」と声をかけ、メンバーが自分の悩みを言葉にできる場をつくる人です。
この方向では、ツールの使われ方が変わっていきます。同じコラボツールでも、同じ部署のゴールに向かって連携するための場 へ変わってきます。誰かが書きかけた資料に、別のメンバーが続きを書き足し、その横で議論が動く。会議は報告の場から、成果を出すために知恵を持ち寄る場 へと使い直されていく。
新人の育成も、半年で独り立ちさせる仕組みから、「なぜこの仕事を選んだのか」を聞くところから始める育て方に変わっていきます。
グリーンのDX2へ向かう —— 仕組みと関係性が噛み合う職場
オレンジDX2の「業務がツールに寄った仕組み」と、グリーンDX1の「人が育ち合う関係性」を、両方とも備えた方向です。距離は遠いけれど、もっとも豊かな方向と言えます。
この職場では、ツールは業務のハブでありながら、関係性を支える場でもある。
チャットひとつを取っても、業務の決定が記録されると同時に、なぜそう決まったかの議論も残っている。共有ドキュメントは最終版が置かれる場所であると同時に、誰かが書きかけのまま置いたものに、別の誰かが続きを書き足せる場でもある。ダッシュボードに数字が並ぶ横で、メンバーがどう感じているかも読める。
オレンジDX2の仕組みは、放っておくと関係性を痩せさせます。グリーンDX1の関係性は、放っておくと仕組みが追いつかず疲弊します。この二つが お互いを支え合う形で噛み合っている のがグリーンのDX2の風景です。
3つの方向に優劣はありません。「うちはオレンジのまま、もっと洗練されたオレンジになりたい」も、立派なDXです。「まずはグリーンのDX1で、対話を取り戻したい」も、正しい選択です。
このメソッドが教えてくれるのは、目指す姿は職場ごとに違っていい、ということです。
進路を選ぶと、棚卸しの観点が決まる

仮にこのチームが「グリーンのDX1へ進む」と決めたとします。すると、業務の棚卸しの観点が変わります。
オレンジのままDX2へ進むなら、棚卸しの問いは「効率化できる業務はどれか」になります。
けれどグリーンへ進むなら、問いはこう変わります——「対話が奪われている業務はどれか」「経緯が共有されないまま流れている業務はどれか」。
同じ職場の同じ業務を見ていても、目指す方向によって、何を探すかが変わる のです。
ここがサワモト メソッドの実用性の核心です。方向が揃わないまま棚卸しを始めると、「効率化したい人」と「対話を増やしたい人」が、同じ業務を見て真逆のことを言い出します。多くの職場で「DXの議論が噛み合わない」と感じる原因の一つは、これです。
現在地と進路を、共通の言葉で語る

サワモト メソッドが職場で使えるのは、こんな場面です。
- 現在地に共通の名前をつけたいとき —— 違和感がバラバラの言葉で語られていて、議論の出発点が揃わないとき
- 進路を全員で選びたいとき —— 「DXすべき」という抽象論ではなく、「うちはどっちへ向かうのか」という具体的な選択をしたいとき
- 棚卸しの観点を揃えたいとき —— 同じ業務を見て真逆の提案が出る状態から、抜け出したいとき
- ツールに任せることと、人に取り戻すことを分けたいとき
- 関わり方を、個人の好みではなく職場の方向として選びたいとき
サワモト メソッドは、職場を分類するためのものではありません。現在地と進路を、チーム全員が同じ言葉で語れるようになるためのもの です。
地図を持っているだけでは、人は動きません。けれど、現在地と目的地が同じ言葉で語れるチームは、ゆっくりでも確実に歩き始めます。
これが、サワモト メソッドが組織や職場のDXに役立つということだと、私たちは考えています。
あなたの職場では、どんな声が聞こえてくるでしょうか。
