DXでパフォーマンスを上げたい。そう考えたとき、多くの人がAIや自動化に目を向けます。
でも、その手前で立ち止まってみたいことがあります。毎日使っているビジネスチャット、あなたの職場では”整っている”でしょうか。
Teams、Slack、Google Workspace——便利なはずなのに、業務は減るどころか増えていく。通知を切ってもルールを決めても、なぜか疲れる。あなたも、心当たりがありませんか?
結論から書きます。原因は、あなたの使い方ではありません。ビジネスチャットというツールの、根本的な性質にあります。
この記事は、ひとつの気づきになるかなと思って書きました。毎日Teamsに向き合う中で「これ、どうにかしたい」と感じている方へ。
※本文の例はTeamsで書きますが、他のツールも構造は同じです。
通知を切っても、疲れは消えない
ビジネスチャット疲れへの対策は、ネットを探せばいくらでも見つかります。
通知を見直す。重要度の低いチャネルはミュートする。業務時間外は通知をオフにする。
試した方も多いと思います。実際、しばらくは効きます。
でも、必ず同じ場所に戻ってきます。通知の数は減ったのに、なぜか疲れている。
ここで、自分を責める必要はありません。
通知設定も運用ルールも、対症療法です。熱が出たから解熱剤を飲んでいるだけで、熱の原因には触れていない。だから、しばらくすると同じ症状が戻ってくる。
本当の原因は、もう一段深いところにあります。
ビジネスチャットは「ツール」じゃない、「仕事場」だ

答えはシンプルです。
これまでのツールと、ビジネスチャットは、別物です。同じ「ITツール」と一括りにしてしまうから、本質を見失う。
ExcelやWordを思い出してください。ファイルを開いて、作業して、保存して、閉じる。完結しています。誰かと共有するときも、メールに添付したり、ファイルサーバーに置いたり——ツールは業務の”外側”に存在していました。
ビジネスチャットは、ちがいます。
会話、連絡、相談、判断、合意——つまり、コミュニケーションとコラボレーションそのものが、ツールの中で起きる。ファイルの共有も、会議も、進捗の確認も、その場で行う。業務の流れが、ツールの中を流れていく。
これは、ツールが業務の”間”に入ってきた、ということです。

別の言い方をすれば、ビジネスチャットは「仕事場」になりつつあります。
だから、自分たちが居心地よく仕事ができるように、整える必要がある。整えなければ、ただの散らかった部屋で過ごすことになる。これが、疲れの正体です。
整える、とは何を整えるのか。
業務の流れです。仕事をどう進めるか。誰が何を判断するか。情報をどこに置くか。報告はどう回すか。
これらは、職場ごとに違います。同じ製造業でも、同じ営業部でも、それぞれの「仕事の進め方のお作法」があります。長年積み重ねてきた、その職場固有のやり方。
ご自身の職場を、少し思い浮かべてみてください。誰かが何かを判断するとき、どこに情報が集まり、誰の確認を経て、どこに記録されているでしょうか。それは、長年の積み重ねでできた、その職場ならではのお作法です。たぶん、明文化されていない部分も多いはずです。
そして、ビジネスチャットを本当に使いこなしている職場は、必ずこのお作法を、自分たちの職場のルールに合わせて取り込んでいます。
以前はバラバラのツールに散らばっていた業務の流れ——紙、電話、メール、添付ファイル、対面会議——が、一つの仕事場の中で繋がる。情報が一元化され、誰がいつ何を判断したかが時系列で見える。判断に必要な人だけが、必要なタイミングで関わる。
そうやって、お作法そのものが、ビジネスチャットの中に組み込まれていきます。
これが、ビジネスチャットを「仕事場」として整える、ということです。
逆に言えば、職場の使い方ルールを決めていないビジネスチャットは、ただの散らかった部屋となります。便利な機能はたくさんあるけど、自分たちのやり方とは無関係に置かれているだけ。だから、使えば使うほど疲れる。
ビジネスチャットは、職場ごとのカスタマイズなしには使いづらい。
これは、ビジネスチャットの欠陥ではありません。ビジネスチャットというツールの性質です。
DXは「足す」んじゃない、「引く」もの
もう一つ、お伝えしたいことがあります。
DXという言葉を聞くと、つい「新しいことを始めること」「便利な機能を増やすこと」と考えがちです。だから、ビジネスチャットを導入して、新しい機能を追加して、自動化を進めて——どんどん”足して”いく。
でも、その結果は、業務が増えていくことです。
報告書を作る作業に、Teamsへの投稿が”追加”される。会議に、議事録作成のひと手間が”追加”される。連絡手段に、新しいチャットが”追加”される。
これでは、疲れて当然です。
本来のDXは、足すものではありません。置き換えて、減らすものです。
アナログ時代の業務プロセスを、新しい仕事場(=ビジネスチャット)に合わせて作り直す。そのとき、不要になったやり方は、思い切って無くしていく。電話で確認する習慣、メール添付でファイルを送る習慣、報告のためだけの会議——これまで当たり前だったやり方の中に、もう必要のないものがあるはずです。
増えるのではなく、減るのが正解。
では、具体的に何を減らせるか? チームで業務プロセスを棚卸ししてみると、意外なほど”無くしていけるもの”が見つかります。
職場で「無くしていけるもの」チェックリスト

ここからは、実際に何を減らせるかを、3つのカテゴリーで整理します。
ご自分のチームに当てはめて、思い当たるものにチェックを入れてみてください。一つでも当てはまれば、それは「引くDX」の入口です。
A. コミュニケーション(連絡・伝達)で無くしていけるもの

- 全員宛ての「念のためCC」「とりあえずBCC」のメール
- 「これ送ったっけ?」「読んでくれた?」の確認連絡
- チームに関わる業務連絡を個別チャットで送る習慣
- 「あの人にも伝えとかなきゃ」の二重連絡
- 「了解しました」だけの返信、既読確認のためのリアクション
これらの多くは、ビジネスチャットのチャネル投稿、メンション機能、リアクションで置き換えられます。誰に何を伝えるかを整理するだけで、メールの量が劇的に減ります。
B. コラボレーション(ファイル・情報管理)で無くしていけるもの
- メール添付でのファイル送付(「最新版送ります」)
- 「最新版_v3_最終_本当の最終.docx」のファイル運用
- 個人のデスクトップやマイドキュメントに置く業務ファイル
- 「あのファイル、どこにありましたっけ?」のやり取り
- Excelで作った台帳をメール添付で配る運用

ファイルは「送る」のではなく、「みんなが見える場所に置いておく」発想に切り替える。同じファイルを同時に編集できる時代、添付して配る作業は、ほとんどが不要です。
C. 業務プロセス(会議・段取り)で無くしていけるもの
- 報告のためだけの定例会議(参加者は聞いてるだけ)
- 議事録を別途作って配る作業
- 「電話で確認した」記録に残らないやり取り
- 「あの人が休みだから止まる」業務
- 「言った言わない」のトラブルが起きる進め方
ここが、一番大きな引き算ができる場所です。情報の置き場所が決まっていれば、報告会議は不要。チャネルに投稿しておけば、議事録は自動的に残る。会議は、判断や対話が必要なときだけに絞れます。
3つのカテゴリーを通して気づくのは、これらが「アナログ時代の名残」だということです。
紙とファイルの時代に最適化されたやり方を、新しい仕事場にそのまま持ち込んでいる。だから、業務が二重になって、疲れが生まれる。
無くしていけるものを一つずつ”引く”だけで、職場の景色は変わっていきます。
あなたの職場で、何から「引く」か
全部やる必要はありません。
上のチェックリストの中から、まずは一つ。あなたのチームで一番疲れているものを選んで、無くしてみる。それだけで十分です。
「念のためCC」のメールを、チャネル投稿に置き換える。月曜の報告会議を、Teamsへの投稿に変えて、会議自体を無くす。ファイル添付をやめて、共有フォルダに置く運用に切り替える。
一つでも”引けた”ら、職場の空気は少しだけ軽くなります。そして、その軽さを実感したチームメンバーが、次の”引き算”を提案してくれるかもしれません。
これが、SawaLeafが大切にしている「プロセスの棚卸し」の最初の一歩です。
ツールを足すのではなく、これまでのやり方を見直して、自分たちの仕事場を整える。派手な改革ではなく、小さく無くしていく作業の積み重ね。それが、本当のDXの姿だと、私たちは考えています。
ビジネスチャットで疲れているのは、あなたの使い方が悪いからではありません。仕事場が、まだ整っていないだけです。
整え方は、職場ごとにちがいます。あなたのチームの「お作法」に合わせて、ゆっくり整えていけばいい。
最初の一つ、何から引きますか?

