【第6回】グリーン職場の未来:強い部活と生成AIファシリテーター
※まだ第1回をご覧になっていない方は、こちらからどうぞ → 【第1回】AI時代、職場の色分けはどう役立つ視点になるのか
1. はじめに
グリーン職場とは「共感」と「対話」を重んじる職場文化です。しかし、レッドやアンバー、オレンジの職場に慣れている多くの人にとって、グリーン職場はイメージしにくい存在かもしれません。そんなとき、「強い部活」を例にすると、グリーンの特性が一気にわかりやすくなります。
2. 強い部活モデルに学ぶグリーン職場

強い部活には明確な目標があります。たとえば「大会で優勝する」「全国ベスト8に入る」など、具体的なゴールがチーム全体で共有されています。
顧問の先生は単なる指示役ではなく、選手たちが自主的に強くなるための「サポーター」です。選手たちは自分たちで筋トレを考え、練習メニューを工夫し、仲間同士で戦術を磨き合います。先生は必要に応じて方向性を示しますが、最終的に走るのは選手自身です。
この「自分たちで考え、動き、結果を出す」姿勢こそが、グリーン職場の根本にあります。上司は明確なビジョンを提示しますが、その道のりはメンバーに委ねられます。チームの中で生まれる自律性と主体性が、グリーン職場の最大の特徴です。
実際、私が在籍していた Microsoft でも、3代目CEOの Satya Nadella が著書『Hit Refresh』の中で、「共通の目的(Purpose)を持った強いチームをつくる」ことに多く時間を注いできたことが詳しく語られています。
Nadellaは特に 「共感(empathy)」 を中心に据え、メンバーがお互いに学び合う「learn-it-all」文化を育て、目的を定期的に再確認しながら合意形成を重ねるスタイルを推進していました。
これは、まさにグリーン職場の根幹に通じる考え方です。
3. グリーン職場が陥る落とし穴

グリーン職場では「共感」や「協調」を優先するあまり、「なかよしこよし」の空気が生まれやすいという弱点もあります。対立を避けるために本音を言わず、相手に合わせることが目的化すると、互いに傷をなめ合うだけの関係になりかねません。
本来、共感は「挑戦する勇気」を支える基盤であるはずです。しかし、それが安易な慰めに変わると、成長や変革は停滞します。グリーン職場が真に「強い」文化を育むためには、対話を通じて衝突を恐れず、お互いの意志を尊重しながら切磋琢磨する姿勢が欠かせません。
4. グリーン職場の「溝」の問題
共感と対話を重視するグリーン職場ですが、ここには大きな課題があります。それは、考え方や価値観、経験値の差によって生まれる「溝」です。共感しやすいのは、背景や価値観が近い人同士。多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まると、話し合いが平行線をたどり、埋めがたい溝が生まれることがあります。
この「溝」を放置すると、表面的な共感だけが残り、本当の意味での協働は進まなくなります。グリーン職場が次のステージに進むためには、この「溝」をどう埋めるかが重要な鍵になります。
5. 生成AIが「溝」を埋める未来

生成AIは、異なる意見や価値観を整理し、橋渡しすることが得意です。AIは会話の論点を可視化し、要点をまとめ、誰も置いてけぼりにしない議論を支援します。未来のグリーン職場では、この生成AIが「ファシリテーター」としてチームに加わる可能性があります。
「強い部活」に外部コーチが入ってメンタル面や技術面をサポートするように、生成AIは中立的な立場でメンバー間の理解を深め、チームの潜在能力を引き出す役割を果たすでしょう。
さらに、生成AIなら、ほぼ同時にすべての部員に話しかけることも可能です。これにより、一人ひとりの理解度や状況を把握しながら合意形成を進めるという、これまで人間だけでは難しかった調整が実現できるかもしれません。これもまた、グリーン職場にとって大きな魅力であり、新しい可能性の一つです。
6.「強い部活 × AI」の新しい可能性
未来のグリーン職場では、上司(顧問)が方向性を提示し、生成AIが課題整理や進捗確認を補佐します。メンバーは主体性を持って学び、挑戦し続ける一方で、AIからのフィードバックを活かして自己成長を加速させます。
「共感と対話」と「AIによる客観的支援」という二つの要素が掛け合わさることで、人とAIが共に進化を模索する新たな職場文化が生まれるのです。
7. まとめ
あなたの職場には、この「溝」を埋める仕組みがありますか?
生成AIがファシリテーターとして職場に加わる未来に、どんな期待と不安がありますか?
仲良しで止まるのか、それとも強いチームへ進化するのか。その選択は、あなた自身の意志に委ねられています。
グリーン職場は、共感を基盤にしながら、挑戦と成長を大切にする職場です。そしてこれからの時代、生成AIとの融合が、その進化をさらに後押しします。
次回は、グリーンの先にある「ティール職場」を深掘りしていきます。人とAIがどのように未来を描いていくのか、さらに一歩踏み込んで考えていきましょう。