第6回:諦めていたことに気づく – AIを味方につける 自分らしい働き方

シリーズ『AIを味方につける 自分らしい働き方』第6回

前回、AIに「命令するのではなく、相談する」という話をしました。話しかけ方を変えた瞬間から、AIは別の顔を見せてくれる。そして相談しながら動いていくうちに、自分の地図が少しずつ見えてくると…

今回は、その先にある話です。AIに相談するようになると、「あれ、これもできるかも」という発見が出てきます。長い間、時間がなくてできなかったこと。面倒で後回しにしてきたこと。そういうものが、少しずつ動き始めるのです。


効率化の先に

一年ほど前に、「時間の使い方を再設計しよう」という記事を書きました。業務プロセスを整えて、集中する時間を取り戻し、人と関わる時間を取り戻す——そんな話でした。

あれから少し経って、あらためて思うのです。効率化だけでは、戻ってこないものがあったのかもしれない、と。

効率と成果で、目の前のことをひとつずつ片付けていく。それは頼もしい動き方のはずなのに、続けているうちに、自分自身もどこかで片付けられていくような感覚がある。

そう感じたことは、ありませんか。


ある日の夕食の話

疲れていれば、カップ麺でもいいやとなる日もあります。

でもある日、冷蔵庫を開けて思ったのです。「この食材、今日のうちに使い切っておきたい。でも、何が作れるかな」

試しにAIに相談してみると、自分では思いつかなかった使い方を提案されたのです。コチュジャンを使って韓国風にしてみては、と。

——それ作ってみよう!

不思議なもので、たったそれだけのことで、テンションが変わる。気分が変わる。カップ麺でいいやと思っていた自分が、今や台所に立っている。

こだわりを持てば、どこにでもAIを活用して、新しい可能性や選択肢が開ける。これも、諦めなくていいことのひとつだったのだと思います。


朝の定点観測

もう一つ、続けていることがあります。毎朝、気になっていることをAIに口頭で解説してもらう時間です。

最近のAIは、チャットで読むだけでなく、声で解説してもらうこともできます。朝の支度をしながら聞く、という使い方もなかなかいい。

今日の天気と太陽光発電の見込み。株式市場の騰落レシオ。ガソリンの価格など。

どれも自分が気になって選んだものです。ただ、数字だけ見ても、昨日と今日の違いしか分からない。一般的には、それで終わりです。

でもAIに解説させると、景色が変わります。

この地域の天候がこうなりやすいのはこういう地形だから。市場がこう動いたのはこういう背景があるから。ガソリン価格に影響しているのは、いま世界でこういうことが起きているから。

同じ数字の向こう側に、理由と文脈が見えてくる。一般的なニュースを流し聞きするのとはまったく違う、自分の関心軸を通した世界の見え方がそこにあります。


自分の根っこを見直す

夕食の話と、朝の話。動きとしては違うものに見えます。

でも、どちらも向かう先は同じなのかもしれません。

疲れたから、もうこれでいいや——そうやって手放してきたものに、もう一度手を伸ばしてみる。諦めていたことに、もう一度挑んでみる。

AIには、そういう力があると感じています。人を前向きにさせる力、というのでしょうか。

諦めていたことに光を当て、気になり続けていたことを日々手入れしていく。その積み重ねが、自分の根っこを少しずつ耕していく感じがする。


こんなはずじゃなかった

こう考えると、仕事の中でも同じことが言えるかもしれません。

車が好きで自動車の営業になった人がいるとします。お客さんと車の話をしたい、という憧れが最初にあったはずなのに、いつの間にか成果とノルマに追われ、「こんなはずじゃなかった」と感じ始める。

多くの仕事で、似たようなことが起きているのではないでしょうか。最初の小さな憧れが、効率と成果の波に押し流されていく。

成果という軸は大切です。それがなければ仕事は続けられない。ただ、軸がたった一本だけだと、揺れたときに倒れやすい。

成果と興味、二本の軸を地中に伸ばす木の根のイメージ

成果の軸と並んで、
自分の興味やこだわりという、もう一本の軸をたてること

組織の中にいても、
自分を見失わずに立ち続けられる

AIは、その二本目の軸を育てることを、静かに支えてくれる存在なのかもしれません。


AIを、どう使いますか

AIを使うと仕事がなくなる。頭がバカになる。そういう声は、あちこちで聞こえてきます。

それはそれで、間違っていないのかもしれません。

ただ、結局のところ、問われているのはこういうことではないでしょうか。

「あなたは、AIをどう使いますか?」

ただ仕事の手を抜くためでもなく、ただ生産性を上げるためでもなく。自分のこだわりを取り戻すために。自分の関心を耕すために。自分の根っこを、もう一度見直すために。

「いつかやろう」と保留にしてきたこと。それは捨てていたわけではなかったはずです。

AIと話すようになると、その保留の蓋が、ふっと軽くなる瞬間があります。


おわりに

もし時間とゆとりがあったら、やってみたかったこと。あなたにとって、それは何でしょうか。

すぐに答えを出さなくていいのです。ふっと浮かんだものを、そっと覚えておくだけで十分。

次の回では、そうやって見つけた時間を、急がずにどう過ごしていくか——そんな話をしてみたいと思います。

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