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第5回:「個人にも求められるAIリテラシー」-AIと向き合う、新しい習慣

はじめに:「AIリテラシー」の本当の意味

「AIリテラシーが必要」とよく聞くけれど、実際それって何でしょうか?

プロンプトの書き方を覚えること? 技術的な仕組みを理解すること?

実は、個人にとってのAIリテラシーで最も大切なのは、「どこにデータがあって、どのAIに何を学ばせているか」を把握することなんです。

今回は、多くの人が見落としているけれど、実はとても重要な「AIとの関係性」についてお話しします。

※このシリーズは、ChatGPTに限らず、CopilotやGemini、Claudeなど他の生成AIにも共通する考え方を扱っています。


1. まず前提:AIは時々間違える

第4回でお話ししたように、AIには「ハルシネーション」という特性があります。もっともらしい答えを言うけれど、時々間違えるということです。

だから、影響度の高いこと(税金、法律、医療、重要な数値計算など)では必ず確認が必要。でも、日常的な質問(料理のアイデア、映画の感想など)なら、そこまで神経質にならなくても大丈夫です。

要は「ここで間違えたら、どのくらい困るか?」で使い分ければいいということです。


2. AIは、あなたとの「関係性」を覚えていく

さて、ここからが今回の本題です。

AIがあなたのことを「覚えている」

実は、最近のAIには「記憶機能」があります。

使えば使うほど、AIはあなたのことを覚えていきます

  • あなたの専門分野や興味
  • よく相談する内容
  • 好みの説明スタイル
  • 過去のプロジェクトの経緯

1回目の相談 「プレゼン資料の構成を考えて」 → 一般的な構成案が返ってくる

10回目の相談 「プレゼン資料の構成を考えて」 → あなたの業界、スタイル、過去の成功パターンを踏まえた提案が返ってくる

これ、すごく便利ですよね。

対話の履歴は「あなたの資産」

ここで大切な視点があります。

AIとの対話を重ねることで、あなた専用にカスタマイズされたAIができあがっていくんです。

  • あなたの仕事の進め方を理解している
  • あなたの考え方のクセを知っている
  • あなたが必要とする情報の粒度が分かっている

これって、あなたが時間をかけて育てた「デジタル資産」なんです。

これって、
あなたが時間をかけて育てた
「デジタル資産」なんです

普段の仕事で使う言葉で言えば、AIは「あなたのことをよく知っている、頼れる相談相手」に育っていくイメージです。

💡 コラム:本格的に使うなら、有償版を検討しよう

この「記憶機能」、実は無償版では制限されている場合があります。

ChatGPTの無償版は軽い記憶機能のみで、本格的な長期記憶はPlusやPro版の機能です。他のAIサービスでも同様に、無償版と有償版で記憶の質や期間が異なることが多いです。

もし「AIとの関係性を本格的に育てたい」「自分専用の相談相手として使いたい」と思うなら、有償版の利用を検討すると良いでしょう。月額料金はかかりますが、時間をかけて育てた「あなた専用のAI」という資産が手に入ります。

でも、ここに大きな問題がある

その関係性は、他のAIサービスには引き継げません。

例えば:

  • ChatGPTで半年間、対話を重ねてきた
  • あなたの仕事スタイルをChatGPTは理解している
  • でも、Claudeに乗り換えたら?
  • また一から関係を築き直し

せっかく積み上げた「あなた専用のカスタマイズ」が、そのサービスの中に閉じ込められてしまうんです。

これは単なる「不便さ」ではありません。あなたが時間をかけて育てたデジタル資産が、そこに置き去りになるということです。


3. だから「どこで育てるか」が重要になる

あなたの「拡張脳」はどこにある?

AIは、あなたの思考を助ける「拡張脳」のような存在になりつつあります。

そう考えると、こんな疑問が浮かんできませんか?

  • 私の拡張脳は、今どこにあるの?
  • そこには、どんなデータが接続されているの?
  • 将来、別のサービスに移りたくなったらどうなるの?

これが、個人レベルで意識すべき「AIリテラシー」なんです。

実際のケース:クラウド連携

最近のAIサービスでは、あなたのクラウドストレージ(Google Drive、OneDriveなど)と連携できます。

設定例:

  • ChatGPTにGoogle Driveのアクセス許可
  • ClaudeにDropboxの参照権限
  • CopilotにOneDriveの連携

便利ですよね。でも、こう考えてみてください:

「私の個人データ(写真、メモ、仕事の資料)に、どのAIがアクセスできる状態になっているんだろう?」

これを把握していないと、知らないうちに複数のAIサービスがあなたのデータにアクセスしている状態になっているかもしれません。

まずは一つ、メインのAIを決める

だからこそ、個人で使い始める段階から、こんな意識を持つことが大切です:

「どのAIをメインで育てるか」を決める

複数のAIサービスを同時に使うのではなく、まず一つを選んで、そこで関係性を深めていく。

こうすることで、あなたのデジタル資産が分散せず、一箇所に蓄積されていくんです。

「どのAIをメインで育てるか」を決める

複数のAIサービスを同時に使うのではなく、
まず一つを選んで、そこで関係性を深めていく。

こうすることで、あなたのデジタル資産が分散せず、
一箇所に蓄積されていくんです。

そして、個人レベルでこうした経験を積んでおくことは、将来仕事でAIを使うときにも役立ちます。


おわりに:あなたの『拡張脳』、どこで育てますか?

AIリテラシーとは、結局のところ「自分の拡張脳が、どこに、どんな状態で存在しているかを把握する力」なんです。

  • AIとの対話履歴は「資産」である
  • その資産は、サービス間で移動できない
  • だから「どこで育てるか」が重要
  • 自分のデータがどこに接続されているか把握する

これらの視点を持つことで、AIを「なんとなく使う」のではなく、「意識的に育てる」ことができるようになります。

そして、この個人レベルでの経験が、職場でのAI活用にも活かされていくのです。


次回予告:「個人の生活が豊かになる」

次回は、このシリーズの最終回です。

個人レベルでAIとの付き合い方を身につけると、日常生活にどんな変化が生まれるのか。

第1回から第5回までお話ししてきた「AIと向き合う、新しい習慣」を振り返りながら、AIを「使いこなす」のではなく、自然に「付き合う」ことで広がる、新しい生活の可能性についてまとめます。

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